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はじめに

 【モロケン】では、これまで2度テレマークに関するリポートを掲載してきました。1度目は、モーグルスキーから見たテレマークスキーの世界について(特集vol.7 ~ テレマークスキー講習会 体験リポート ~)、そして2度目は、一般テレマーカーが語るテレマークスキーの魅力について(特集vol.12 ~ テレマークスキーの魅力を探る ~)リポートしてきました。
 テレマークリポート第3弾の今回は、プロ・テレマーカー稲垣勝範(いながき まさのり)氏へのインタビューをとおしてテレマークの世界をさらに深く掘り下げてみたいと思います。

稲垣プロへのインタビュー

 まず稲垣さんのテレマークとの出会いについて教えてください。

稲垣  僕がテレマークというスキーを知ったのは18歳の時でした。高校卒業してすぐに、スキーをするためにスイス・ツェルマットに移り住んだんですが、実はスイスに行った当初はテレマークを知りませんでした。それまではアルペンスキー、それもどちらかというとコブが好きでよく滑ってましたね。

 それが、どうしてテレマークをやろうと思ったんですか?

稲垣 スイスで知人にテレマークというスキースタイルを教えてもらったんです。その時、『テレマークはまだまだ一般に浸透していないから、今から始めたらテレマークの第一人者
になれるよ。』って言われて。(笑) 

 ところで、以前某スキー場でテレマーカーがコブ斜面を滑っているのを見かけたことがあるんですが、そのスタイルがとても印象的でした。稲垣さんもコブ斜面を得意 とするテレマーカーとして、コブを滑ることへのコダワリはありますか?

稲垣 単純にコブって面白いじゃないですか。自然コブって大抵は急斜面にはりついているわけですけど、そこを全部滑り終わった後の“達成感”を感じますね。

 それと僕は、“コブを滑ることができることへのコダワリ”はとても意識しています。僕はプロとして活動しているんで、『この斜面は滑れません』というわけにはいきませんから。(笑)
 プロである限りはコブも滑れるし、カービングもできるし、パークも入れるみたいに何でもできないといけないですから。

 ヨーロッパなんかではそうなんです。スキーの先生はオールラウンドにどこでも滑れる存在で“ヒーロー”なんですね。そういう意味で、僕もテレマーカーとしての真のオールラウンダ―でありたいと常に思っています。

 テレマークスキーというと“山スキー”というイメージがありますが、稲垣さんが考えるテレマークとは?

稲垣 基本的に登るのがキライなんでリフトで行けるとこで滑ってますよ。(笑)
それとテレマーカーの僕が言うのもなんなんですけど、山に入るのならテレマークで敢えて登らなくても、アルペン用のブーツで装着可能なデュークっていうのがあるんですよ。基本的にはアルペンの金具と同じようにカカトを固定してるんですが、留め具を外せばカカトが浮くんで、テレマークのような動きがだせるんです。そういう金具が出てきてしまった今、山に入るのに、なにもテレマークでなくてもいいんですよね。

 「山に入るのならテレマーク」という訴えかけが、アルペンスキーでもできるようになると、スキーにおけるこれからのテレマークの立ち位置はどうなっていくのでしょうか。

稲垣 確かにテレマークスキーを始めた人は“山ベースで入る人”が多かったみたいですね。つまり、『ここにある山に登りたい』っていうのがあって、そのための移動手段としてテレマークを選択したということでしょうか。そういう人に話を聞くと、テレマークのテクニックを追及するよりも、移動手段に付属で滑る機能がついていてみたいな。
でも、こういう人たちはかえってテレマークスタイルに強いこだわりをもってるんですよね。

ただ、これからテレマークがもっともっと普及していくためには、『テレマークは移動の手段だよ』って言う人に加えて、滑りの楽しさやスタイルを訴えていかないと、いつまでたっても『テレマークってゲレンデで滑るもんじゃないよね』ってトコから抜け出せないですよね。

 テレマークスキーが今、過渡期にさしかかっているのが良くわかりました。ところで、滑りの技術に関してはどうですか?これからもテレマークの技術は大きく変わっていくと考えていますか?

稲垣 もちろんこれからもテレマークの滑り方に関しては新しい技術がたくさん出てくると思います。ただ、技術論に関していうと、僕は“テレマークの教本”を敢えて作らないのが理想だと思っています。 どうしてかって言うと、現在のウィンタースポーツの中でテレマークが一番可動域が広いスポーツなんですよ。だから、テレマークの技術はこれじゃなきゃだめという事が当てはめられないスポーツだと思うんですよね。もちろん基本のテクニックっていうのはあ

りますけど、『こうしたほうがコブが滑りやすいですよ』、『ゲレンデはこうすると滑りやすいですよ』、『パウダーはこうしたほうがいいですよ』っていうように。でも、『テレマークの滑りはこれじゃなきゃだめ』って当てはめるのはよろしくないかなって。

 稲垣さんが今後テレマークを通じて取り組んで行きたいことはなんですか?

稲垣  僕は、スノーボードは“横乗り”、スキーは”縦乗り”、そしてテレマークは“斜め乗り”だと思うんですよね。スノーボードとスキーを足して2で割ったのがテレマークみたいな。だから、テレマークをする前にスノーボードをやってたって言う人も結構いるんですよ。

 僕の役目はテレマークに入ってきた経緯はどうであれ、そういう人達にテレマークの遊び方、楽しみ方を伝えていくことじゃないかなって思ってます。コブを滑るのも楽しいし、カービングするのも、パウダーを滑るのもテレマークでガンガン楽しめるっていうところですね。
 そういう意味では、講習会なんか通じてテレマークの魅力を発信していかなければと思っています。

 ありがとうございました。


インタビューを終えて

 今回の撮影とインタビューは8月29日(土)、兵庫県大屋スキー場で行われた「テレマーク、アルペンキャンプ(タナベスポーツ主催)」の合間に行いました。
このサマーゲレンデのコブ斜面での稲垣プロの滑りは圧巻で、“真のオールラウンダーとしてのプライド”を強く感じました。一方、講習会での懇切丁寧な解説も印象的でした。

 そういえば、取材の最後に『講習会等の活動を通じて自分も成長していきたい』という言葉で締めくくった稲垣プロ。今後の稲垣プロの活動の幅が一層広がっていくことが、テレマークスキーの普及を牽引する大きな力になっていくように感じました。 (伊藤コウタロウ)
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